デジタル化・AI導入補助金とは?対象経費・補助額・申請手順を解説

ITツールを導入した際に、国が一部費用を補助する制度「IT導入補助金」が、2026年は、「デジタル化・AI導入補助金」として制度名を変更して開始されます。これまでのIT導入補助金よりも、補助率が高く、対象経費も拡大しており、より柔軟に制度を活用できるものになっています。

これまで、
「問い合わせ対応の一次対応を任せたい」
「請求や受発注の二重入力を減らしたい」
「議事録の要点整理を自動化したい」よくある悩みを「AIを導入して変えたい」と思っていても導入費用面で諦めていた課題も
この制度を活用することで、利用することができるようになります。

押さえておきたいのは、AIは単体で導入という点ではなく、会計・受発注・CRM・問い合わせ管理などの業務などと組み合わせ、業務プロセスを改善できるケースが補助となる点です。

この記事では、
目的に応じた申請枠(類型)ごとの特徴、補助額の考え方、対象者、対象経費(AIの扱い)などを整理して解説します。
※補助率・上限額などは年度や公募回で変わるため、最終的に公式資料で確認してください。

目次

1.デジタル化・AI導入補助金でできること
2.いくら補助される?補助額・補助率を枠別に早見
3.デジタル化・AI導入補助金の対象者とは?
4.対象経費:何に使える?AIツールはどこまでOK?
5.他の補助金との使い分け
6.まとめ

デジタル化・AI導入補助金でできること

デジタル化・AI導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が、業務効率化やDX、インボイス対応、セキュリティ対策のために導入するITツール等の費用を支援する制度です。

ここで押さえたいのは、「AIを買うための補助金」ではないということです。「AI機能を含む業務ツールを導入し、仕事の流れを整える」そのための支援です。

例えば、以下のような業務のやり方に踏み込む改善が中心になります。

  • 問い合わせの一次対応を自動化し担当者の手作業を減らす。
  • 会計と請求を連携させ、転記をなくす。

制度案内では、「補助額は最大450万円、補助率は1/2〜4/5」と示されています。あわせて、目的別に4つの申請枠(通常枠/インボイス枠/複数者連携枠/セキュリティ枠)が用意されています。導入の目的に合う枠を選べば、対象経費と上限額を整理しやすくなります。

IT導入補助金との違いは?

これまでのIT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が、会計・受発注・勤怠・顧客管理などのITツール(ソフトウェア/クラウドサービス等)を導入する際、費用の一部を補助する制度です。狙いは、業務の効率化につなげることにあります。

しかし、2026年度の「デジタル化・AI導入補助金」ではITツールの導入による業務効率化だけでなく、デジタル化やAI活用を通して企業そのものの成長性や生産性を高める制度へと進化しています。

基本的な補助対象・補助率は大きく変わりませんが、新たに「複数者連携デジタル化・AI導入枠」の申請枠が新設されています。商店街・業界団体・複数の事業者グループなどが連携してデジタル基盤を導入するなどの取り組みが補助されます。

IT導入補助金からデジタル化・AI導入補助金と制度名は大きく変更されていますが、根本的な考えた方には大きな変更はなくこれまで通りの支援内容であると言えます。

いくら補助される?補助額・補助率を枠別に早見

補助金は、目的別に分けられた申請枠ごとに「補助率(何割補助か)」と「補助額(下限・上限)」が決まっています。先に数字を押さえると、全体像が掴みやすくなります。

デジタル化・AI導入補助金の申請枠ごとの補助率・補助額

申請枠(類型)主な対象(ざっくり)補助額(下限・上限)補助率
通常枠(業務効率化・DX)会計/受発注/在庫/勤怠/CRM/SFA/問い合わせ管理等の業務ツール(AI機能付き含む)・5万〜150万円
(業務プロセス1つ〜3つ)
・150万〜450万円
(業務プロセス4つ以上)
・中小:1/2
・最低賃金近傍の事業者:2/3
インボイス枠:
対応類型
インボイス対応の会計・受発注・決済ソフト等
+(条件付きで)PC等のハード
ITツール:〜50万円(1機能)/〜350万円(2機能以上)
PC・タブレット等:〜10万円/レジ・券売機等:〜20万円
ITツール:〜50万以下 3/4
(小規模4/5)/50万〜350万 2/3
ハードウェア:1/2
インボイス枠:
電子取引類型
発注者(大企業含む)主導で、取引先が無償利用できる受発注ソフト等を導入〜350万円・大企業:1/2/
・中小:2/3
セキュリティ対策推進枠IPA「お助け隊サービスリスト」掲載のセキュリティサービス利用等5万〜150万円・中小:1/2
・小規模:2/3
複数社連携IT導入枠商店街など複数事業者で連携してITツール等を導入(a)インボイス枠対象経費:
インボイス枠と同様
(b)消費動向等分析:
50万円×構成員数(a)+(b)合計
最大3,000万円
(c)事務費・専門家経費:200万円
(a) インボイス枠と同様
(b)(c) 2/3

※上記は、令和8年1月時点版の記載に基づく目安です。今後、要件・金額が変更される可能性があります。

申請枠(類型)の選び方|目的で整理する

デジタル化・AI導入補助金の枠は「何を導入するか」よりも「何を解決したいか」で選びます。

  • 日常業務のムダ(入力・手戻り・属人化)を減らす → 通常枠
  • インボイス対応を急ぐ(請求・会計・受発注・決済) → インボイス枠(対応類型)
  • 取引データの授受(電子取引)の仕組み整備が中心 → インボイス枠(電子取引類型)
  • 守り(不正アクセス・情報漏えい対策)を固める → セキュリティ対策推進枠
  • 複数社で共通の仕組みをまとめて導入する → 複数社連携IT導入枠

各種申請枠の詳細について、詳しく解説していきます。

通常枠(業務効率化/DX)

目的会計・受発注・在庫・勤怠・CRM等の業務ツール導入で業務効率化/DXを進める
(AI機能付きツールも対象になり得る)
補助率原則 1/2以内(要件を満たす場合 2/3以内)
補助額・5万円以上~150万円未満(1プロセス以上)
・150万円以上~450万円以下(4プロセス以上)
上限の考え方通常枠の上限は 最大450万円(区分は「改善する業務プロセス数」で決まる)

会計・受発注・在庫・勤怠・CRMなど、日々の業務を回しやすくするための申請枠です。AI機能付きツールも、「業務改善のための機能」として整理できれば対象になり得ます。

補助率は原則1/2(要件により2/3)。補助額は業務プロセス数で区分され、5万〜150万円(1〜3)/150万〜450万円(4以上)が目安です。

インボイス枠(インボイス対応類型)

区分対象補助額(上限)補助率
ITツール(1機能)会計/受発注/決済の いずれか1機能〜50万円〜50万円部分:中小 3/4以内/小規模 4/5以内
ITツール(2機能以上)会計+受発注、会計+決済など 2機能以上〜350万円50万円超の部分:2/3以内(※50万円以下部分は左記の高率)
ハードウェア(条件付き)PC・タブレット等〜10万円1/2以内
レジ・券売機等〜20万円1/2以内

インボイス対応を目的に、「会計・受発注・決済」系ソフトを導入する枠です。

補助額は機能数で区分され、1機能なら〜50万円、2機能以上なら〜350万円。補助率は、50万円以下部分が高率(中小3/4・小規模4/5)で、50万円超の部分は2/3です。

パソコンやダブレット、プリンター、POSレジなどのハードウェアも対象になり、PC等〜10万円/レジ等〜20万円、補助率1/2となります。ただし、ITツールとの同時購入が必要であり、単体での申請は認められておらず注意が必要です。

インボイス枠(電子取引類型)

目的取引先との受発注を電子化し、取引データ(電子取引)の授受を整える
主な対象クラウド型の受発注ソフト等(類型要件に沿う範囲)
補助額下限なし〜350万円以下
補助率中小企業・小規模事業者等:2/3以内/それ以外の事業者等:1/2以内

取引先との受発注を電子化し、データ授受の仕組みを整える枠です。

補助額は〜350万円、補助率は中小2/3/大企業1/2。社内効率化よりも「取引先とのやり取り」を整える比重が大きい類型です。

セキュリティ対策推進枠

目的サイバー攻撃・情報漏えい等への備えとして、セキュリティ対策を強化する
主な対象所定のサービスリスト掲載のセキュリティサービス等
(例:端末/アカウント管理、ログ管理、不正アクセス対策など)
補助額5万円〜150万円
補助率小規模事業者:2/3以内
中小企業:1/2以内

サイバー攻撃や情報漏えいへの備えとして、所定のサービスリスト掲載のセキュリティサービス等を導入する枠です。

補助額は5万〜150万円。補助率は小規模2/3/中小1/2。便利にする投資というより「止めないための投資」と捉えると整理しやすいでしょう。

複数社連携IT導入枠(2026年新設)

目的商店街・地域・グループ等の複数事業者で共通の仕組み(予約/受発注/決済/顧客対応等)を導入する
特徴補助額が**「構成員数に応じて積み上がる」**(個社単独より規模が大きくなりやすい)
補助額の上限(a)基盤導入経費+(b)消費動向等分析経費の合計:最大3,000万円(ほか経費の上限もあり)
区分補助額の考え方補助率
(a)基盤導入経費(ソフトウェア等)①50万円以下 × 構成員数3/4以内(小規模は4/5以内)
(a)基盤導入経費(ソフトウェア等)②50万円超〜350万円以下 × 構成員数2/3以内
(b)消費動向等分析経費※制度の定義に沿う(例:分析等)(類型の規定に従う)
合計上限(a)+(b)=最大3,000万円

商店街・地域・グループ等で、予約・受発注・決済など共通の仕組みを導入する枠です。特徴は、補助額が構成員数に応じて積み上がる点にあります。

(a)はインボイス枠と同様の設計、(b)は50万円×構成員数、(a)+(b)は最大3,000万円。さらに(c)として事務費・専門家経費200万円が示されています((b)(c)の補助率は2/3)。 

補助額の読み間違いを防ぐための注意点

ここまでの金額は「枠ごとの上限」です。実際の補助額は、「補助対象として認められた経費 × 補助率」で決まります。

上限が大きい枠でも、見積の中に対象外の費目が多ければ、受け取れる額は小さくなります。まずは枠ごとの補助額・補助率を押さえたうえで、次章で「対象者」「対象経費(AIの扱い)」を具体的に確認する必要があります。

デジタル化・AI導入補助金の対象者とは?

デジタル化・AI導入補助金は、日本国内に本店や事業拠点を持つ中小企業・小規模事業者が主な対象者で、AIやデジタルツール導入による業務効率化・生産性向上に取り組む企業が申請できます。
インボイス枠など一部の類型では大企業の関与ケースも対象になる例がありますが、原則として中小企業等が中心です。

<補助対象となる主な事業者条件>

  • 国内事業拠点を有すること
  • 申請はIT導入支援事業者と一緒に行う

補助対象となる主な事業者条件

国内事業拠点を有すること

日本国内に事業拠点を持つ法人や個人事業主のうち、中小企業・小規模事業者が主な対象です。
これは従来の「IT導入補助金」と同じ対象であり、業務の効率化やDX推進、AI導入による生産性向上を図る事業者が対象となります。

申請はIT導入支援事業者と一緒に行う

「インボイス枠(電子取引類型)」では、発注者(大企業を含む)が費用負担して受発注ソフトを導入し、受注側の中小企業・小規模事業者等が無償で利用できるケースも支援対象になります。

対象性の確認が必要になりやすいポイント

判断が難しくなりやすいのは、申請主体や導入内容の整理が不十分なケースです。
特に多いのが、名義と事業実態が一致していないパターン。
「誰が」「どの事業として」「何の業務改善を目的に」導入するかが曖昧になると、対称性の説明難度は一気に高まります。

また、導入目的が業務改善と具体的に結びついていない場合も注意が必要です。
生成AIの活用であっても、

  • どの業務工程を
  • どのように短縮・削減・代替するのか

が示せなければ、目的が抽象的と判断されやすくなります。
(例:問い合わせ1次対応の自動化、請求処理の省力化、文章作成の定型業務削減など)

さらに、設定・研修・運用支援といった役務(サービス)の比率が高いにもかかわらず、見積が「一式」表記中心になっているケースも注意が必要です。

対象経費:何に使える?AIツールはどこまでOK?

対象経費は、まず「ソフト/サービス」「クラウド利用料」「導入関連費」の3つに分けて整理します。こうして分けると、見積書のどこを見ればいいかが一気に明確になります。

また「生成AIだから対象外」とは限りません。判断の軸はシンプルで、以下の3点になります。

①枠の目的(業務改善)に合っているか
②費用を経費区分として説明できるか
③要件を満たすか

対象経費の整理(ソフト/クラウド/導入関連費)

見積でつまずきやすいのは、内訳が「設定一式」「導入支援一式」のように中身が見えない形になっているケースです。内訳が粗いと、あとで証憑整理や実績報告の段階で説明が必要になり、差し戻し・再見積が起きやすくなります。最初から「何をする費用か」が分かる言葉に分解しておくほうが、結果的に早いです。

AIツールはどこまで申請できるか

判断は「AIかどうか」ではありません。ポイントは、どの業務工程が、導入後にどう変わるかを説明できるか、です。

たとえば「問い合わせ一次対応の下書きを作り、担当者は確認と例外対応に集中する」「議事録を要約し、共有までの時間を短縮する」。このように、「工程→変化」が言語化できる導入は、業務改善として整理しやすくなります。

導入内容の目安

業務プロセス改善として説明しやすい

AIが単体で浮かず、業務ツールや業務フローの一部として組み込まれているケースです。導入前後で「何が減るか」(作業時間、手戻り、ミス、対応漏れ)が示しやすくなります。

例:問い合わせ一次対応の補助、議事録要約、画像検品の補助、需要予測による発注ミスの抑制。

注意|「便利」で止まりになりやすい

「便利そう」「試しに使う」といった導入は、対象業務や運用が特定できず、業務改善として説明しずらくなります。補助対象として整理するなら、用途を業務工程まで落とし込みます。

  • 例:問い合わせ返信の下書き、定型文書のテンプレ化、社内FAQ作成。可能なら「短縮時間」「吸収件数」など、観測できる効果も添えます。

要確認|経費区分や要件次第で扱いが変わる

既存ツールへのAIオプション追加や、導入支援(設定・研修等)の比重が高いケースは、費用が混在しやすく整理が難しくなります。

この場合は「機能追加/利用料/役務(設定・研修等)」を分け、設定・研修・マニュアル整備などを作業単位で内訳化したうえで、要領の定義に照らして整理します。迷うときは、支援事業者と「費目の切り分け方」を先に固めておくのが安全です。

他の補助金との使い分け

生成AIやAIツールの導入は、業務効率化や生産性向上に向けた有効な手段ですが、導入しただけでは十分な成果につながらないケースも少なくありません。実際には、ツールを業務に組み込んだあと、現場で継続的に使いこなすための運用設計や社内研修が、成果を左右する重要な要素となります。

当社では、導入後の運用定着を見据えた生成AIリスキリング研修を、「人材開発支援助成金」を活用して提供しています。ツール導入と人材育成を切り離さずに設計することで、AI活用を一過性の取り組みで終わらせず、実務に根付かせる支援が可能です。

人材開発支援助成金とは?

人材開発支援助成金は、従業員のスキル向上やリスキリングを目的とした制度です。生成AI分野では、AIの基礎理解から実務での活用方法までを体系的に学ぶ研修が対象となり、人材育成そのものが支援の中心となります。

具体的には、研修の実施にかかる外部講師費用や研修受講料などの研修経費に加え、研修時間中に支払われる従業員の賃金の一部についても女性対象となる点が特徴です。

そのため、企業様にとっては研修費用だけでなかう「業務時間を割いて研修を行うことによるコスト負担」を抑えながら、人材育成に取り組むことが可能です。

両制度を上手く活用するには

「デジタル化・AI導入補助金」と「人材開発支援助成金」は、同時に活用すること自体は可能ですが、同一内容・同一費用に対する二重支援は認められていません。

そのため、両制度の役割を明確に分けた設計が重要になります。

  • AIツールの導入や業務フローへの取り組みは「デジタル化・AI導入補助金」
  • 導入後の運用定着や活用レベル向上を目的とした犬種は「人材開発支援助成金」

上記のように役割と制度を切り分けることで、制度の趣旨に沿った活用が可能になります。

生成AIツールを導入しても、現場で十分に使いこなせなければ業務改善効果は限定的です。人材開発支援助成金を活用した生成AIリスキリング研修では、導入済みのツールを、現場への定着と活用レベルの底上げを図ることができます。

まとめ

この記事では、「デジタル化・AI導入補助金」を使って業務改善を進めるために、最初に押さえるべき整理の順番を解説しました。ポイントは、AIを導入すること自体ではなく、業務のどの部分を、どのITツールで、どの経費区分として説明するかを具体化することです。

また、他制度との混同を避けるために、ツール導入の支援(補助金)と、研修の支援(助成金)は目的と対象が違うことにも触れました。生成AIを業務で使う場合は、導入(仕組み)と定着(研修)を分けて考えると、検討が進めやすくなります。